理想の都世知歩さんは、
「衵、「キライ!!!!」
「……」
きらい。
と。
言われた。
「へー。俺まだ何も言ってないけど。じゃ、こっち向いて言って」
衵は背を向けたまま小さく顔を上げて、そっとこっちに振り返った。
あーあ。
顔真っ赤だし説得力ない。
「言って」
「き、きらい……」
思わずふと笑って、顔を上げた衵の傷付いたような、どこか安心したような顔を目にする。
衵。
衵も、嘘を吐く時があるんだ?
ずっと分からなかった、きっと衵のことを知らないままだったら気付かなかった。
誰を想っての優しい嘘か。
――――『キライ』と言われた瞬間、言葉が出て来なかった。
何でだろう。
嘘吐かせたのは俺。
ごめん、衵。
嘘吐かせて。
気付いたら気付いたで、こんなに愛おしいと思うなんて知らなかった。