理想の都世知歩さんは、
「左肘のキズ」
衵、見たんだ、って。兄ちゃんに問われて。
「うん?」と軽く頷くただの話の流れ。
「じゃあやっと、話せる」
兄ちゃんはそっと目を閉じた。
私はその時、早く帰って都世地歩さんにあの言葉を云いたいと思っていたのだけれど――――
――――すきよりももっと、信じられないような話を聞くことになった。
それは、少し前に遡る。
小さな男の子と私と、――…とある人物の話だった。