理想の都世知歩さんは、
彼は玄関の方に向いて座る私の向かい席に腰を下ろして、テーブルに置いてあった煙草を手に取り、咥えて火をつけた(音がした)。
ゆっくり、目線を上げると、濡れた髪を後ろへ持って行ったままの姿が目に入って、また血潮がアレにアレしてアレしそうになるつまりはそのアカンということである。
し、心臓が痛い。
こんなの、同性さんだってドキドキしちゃうよこんな綺麗なヒト。
「あ、あのー、なぜそんなに綺麗なんですか?」
続ける会話がなく、しどろもどろに空気を壊さないよう気遣ったつもりだ。
私、これから何度でもこの質問してしまうよきっと。
「ハァ?過大評価しすぎじゃないですか」
いやいやいやいや万人に聞いたら万人が同じ返しをしますよ都世知歩さん。
いやいや、と口から漏らしつつ思う。
まだまだ外見程度しか知らないこの人と、私は上手く大人な付き合いをしていけるだろうか心配で不安になりながら咳払いをした。
「アコメ」
「?はい」
「そういえばお前結局いくつなの」
「あ」
そういえば。そうだった。
馬鹿にした『いくつ?』のあと名前しか言っていなかった気がする。
「18です」
「……は?」
「え、だから18です」
「とぼけんな。騙そうと思ってるならそうはいかない」
「え!?本当ですよ!私そんな老けて見えますか!?こないだ卒業式だったんですよ!」
「いや寧ろ童顔に見え……え、本気?まじ?…未成年?ってか子ども…」
それに、何度も頷いて見せる私。都世知歩さんは50回くらい頷かないと信じてくれないような顔をした。
子どもはちょっと失礼だけど。
「ついこないだまで高校生だったやつとルームシェアとか…ほぼHANZAIじゃ…」
「なーに言ってるんですか!大丈夫です!きっと!」
サーッと血の気を失う都世知歩さんの顔が新鮮すぎて面白可笑しくて、私は手を振って笑い立てた。
ただ都世知歩さんはその後煙草の灰が勝手に落ちるまでの間、ずっと、動きはしなかった。