初恋は雪に包まれて


先程の高橋さんの会計。実は今日の失敗はそれだけではなかった。

帰りの際に渡すはずだった処方箋を渡し忘れたり、おつりを間違えて渡したりと、まるでこの仕事に就いたばかりのころにしていたような細かいミスが続いたのだ。


「なんか失敗ばっかりで。」

「日和が失敗なんてめずらしいね、どうしたの。」

「うーん……。」


頭の中で心当たりを探す。少し考えたところで一つ、思い付いた。

……そういえば昨日あまり眠られなかった。

今日はどこか頭がぼうっとしている気がしたけど、もしかしたらあまり眠れなかったせいかもしれない。

その事を夕ちゃんに話す。


「何かあったの?」

「えっと、」


……何かは、あったけど。さすがに休憩中とはいえ、職場では話しづらい。

私の表情でそれを悟ったらしい夕ちゃんは、少し意地悪そうな顔で、ランチ行くわよ、と誘った。


……あぁこれは全て吐かないと帰してもらえないだろうなぁ。

そんなことを考えながら彼女の背中を追った。

< 70 / 134 >

この作品をシェア

pagetop