月光-ゲッコウ-


唇が離れると、照れた様に加雁さんが言った。


「このホテル【pearlmoon】もこのバー【whitemoon】も、千歳の為作った様なものなんだ。だから、月の名前をつけた。次千歳に会った、喜ぶ様に…。」


あたしの為に…?


このホテルもバーも…


嘘ではない事は、実際に名前がつけられてる所からして伝わってくる。


どうしよう…


また胸がいっぱいになる…


けれど…あたしは…



まだ信じる事が出来ない。


好きなのに…


好きだから、また失うのが怖くなる。



『…加雁さんの事は…好き…。でも…あたしは…』


「俺は絶対裏切らない。3年もおまえを探してたんだ。やっとこの手で抱きしめれる所まで来たんだ。」



加雁さん…


3年間をも探してくれたその気持ちを信じたい。



けれど婚約破棄をされてしまった時の


あの時を思い出すと、悲しみや辛さが蘇る



もうあんな思いはしたくない…



「千歳が言ってくれたんだろ?ずっと愛し続けて支えてくれる人はいるって。」


そうだ…あたしが言ったんだ。


加雁さんは彼じゃない…


あたしを探してくれた人…


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