月光-ｹﾞｯｺｳ-
涙が溢れた。
加雁さんに…会いたい
だけど会えない
合わせる顔がない。
会ってなんて言えばいいんだろ
社長の子供が出来たからと
どう伝えればいいの？
終わったら、会いに行くと約束したのに…
「私の子供を生んでくれるね？」
あたしの涙を手でぬぐうと、切ない顔をして言った。
その言葉に答えられない。
今はどうしていいかわからない。
あたしが答えられずにいると、社長は頭を撫でて部屋を出た。
涙が止まらない。
とめどなく溢れては頬を伝って流れる。
この涙をぬぐってくれる、加雁さんはいない。
小さな光が照らし始めたあたしの世界に
また暗闇が押し寄せてくる
あたしはゆっくりと瞼を閉じた。
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