月光-ゲッコウ-


愛していない人に抱かれるのは嫌じゃない。


あたしにとってセックスは、欲求を満たす行為にしか過ぎない。


ただ、こうして抱かれるたびにあたしの闇はまた


よりいっそう暗くなる。



隣で社長が眠るのを確認すると、あたしはベッドから出でてベランダへとむかう。


タバコに火をつけて一息吸うと、空を見上げた。



『今夜は満月か…』



月は綺麗で


そして悲しい。



暗闇の中の光。


あたしの中の光を探したのは、もう昔の話だ。


あたしはこうして、月を眺めてるだけでいい。


自然と目からは涙がこぼれた。


月を見るといつも涙がでる。



これでいい。


あたしはたまに月を見て涙を流す

これでいいの。



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