月光-ゲッコウ-
00.満月





――――…




「はいッ!これママのご飯ね!」


砂をだんごの形にしたのを、あたしの前に差し出した。


『わぁ〜おいしそう!ありがとう、月(ルナ)。』



あたしの言葉に満面の笑みを浮かべる。



あれから3年。


あたしは娘を無事出産した。


その娘も、今年で3歳になる。



社長の愛人時代に貯めたお金が、役にたった。


だけど、それを使ったのは初めの1か月だけだった。


ある日突然、麻生さんから連絡があった。


「社長がね…すまなかった。幸せになってくれって…。せめて、父親として子供の出産費や養育費を払わして欲しいっていってる。」

思わぬ申し出だった。


社長との関わりは出来るだけ避けたいところだけれど、正直あたしの貯金だけでやっていけるか少し心配だった。


「心配いらないわ。私が新堂さんと社長の間に入るから。社長からのせめてもの償いと、会うことの出来ない子供への愛情なのよ。受け取ってあげて?」



麻生さんが間に入るならと、それを受け入れた。


だから毎月、社長名義で200万振り込まれる。



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