翼のない天狗
 
 流澪には深山が魂を飲ませた。
 流澪が意識を戻すと、汪魚が深山に問う。
「お前の目的は何だ?」
 深山は待っていたとばかりに笑う。


「おい、清青」
 馴れ馴れしく呼ぶ、聞き慣れた声。清青は体を起こした。

「……深山」
「おうよ。ああ、目の色は戻っておるの」
 深山の目的とは、清青との面会である。

「どうせ、早くここから出してくれ、って言っても無理だろう? そう見込んで」
 深山は瓢箪を取り出した。一杯やろうか、とでもいう雰囲気である。
「……酒?」
「阿呆、清影様がお前の為に拵えたんだ」

「父様が?」
 ポン、と瓢箪の口を開ける。
「飲め」
「飲めって……」
 清青は後ろ手に縛られている。手の自由はきかない。

「じゃあ、口を開けろ。ほら」
 清青は言われるままにして、上を向いて口を開ける。そこに深山がだぶだぶと瓢箪の中身を空ける。途中、清青がむせた。
< 122 / 224 >

この作品をシェア

pagetop