翼のない天狗

 そして、毅然と言う。
「明日は朔の日です」

 言い残して氷魚は去る。流澪にはもう追う気力がなかった。
 氷魚が辛い思いをしていることは、十分に解っていたではないか。だから彼女を守ろうとしたのに。

 頭の隅で思う。
 朔、新月。人魚の体が人となる夜……どこへ行くのだ、何を考えていらっしゃるのだ、氷魚様。
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