翼のない天狗





 清青は、何があったのかを氷魚に話した。
「……私は天狗であった。しかし、あの何とも不安定な感触は耐えられない。山も都も、水でさえ私を拒んだ。私から風が出ているのではなく、私から遠ざかるために風が起こった……」
 腰かけ、膝の上に置いた手を握った。
「でも今は」
 清青は頷く。

「二人の放った矢の御蔭かもしれない。私はこの姿になったが、今は心安くいられる」
「よかっ……」

 氷魚の顔が、青ざめる。
「氷魚殿?」


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