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警察病院
由香は、中野区にある警察病院のベッドで母親が死亡したとも知らず安らかに寝ている。二日で母と子の幸せな家庭は奈落に落ちた。
由香は母親に会いに何回か病院に来た事がある。おませな子で「先生は美人だからモテモテでしょう。何人彼氏いるの?」と言われ顔が赤くなって看護士から笑われたこともあった。
母親は「由香ちゃん、先生にそんなこと言っては駄目よ」と優しく言っていた事を思い出す。由香を宝物の様に大事にしていた。
その母親はもういない、由香も意識不明だ。由香を守った母親に代わって自分が由香を元気な子に戻してやらなければいけない。意識が戻った時に母親が死んだ事をどう言う。考えるだけで悲しい。

磯山は、由香のベッドの脇で涙を拭いた。
警護の警察官2名も状況は知っている。磯山と同じように涙を拭った。

「由香ちゃん、もう少しの辛抱よ。がんばって、元気になったら一緒に買い物に行こうね。もう高校生だから、いっぱい服が欲しいでしょう。彼氏はいるのかな?先生はね、残念いないの。彼氏できたら紹介するね。今日はもう帰るから。また明日来るね」と何も返事しない由香に磯山は優しく言った。

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