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精神科医
石井は、また埼玉県川口中央病院に戻った。
時計を見ると4時32分を差していた。
小林と交代しなくてはいけない。石井は早足にエレベーターに乗った。

小林は、体重で今にも潰れそうな小さな丸椅子に座っている。
石井の足音を聞いたのか立ち上がった。

「お疲れ」

石井は小声で言った。

「何も無かったか?」

「それが、先ほど、精神科の医師がきまして。由香さんを診察したんです」

「もう来たのか?」

「医師は母親と仲がいいらしく、連絡を受け。駆けつけてきたそうです」

「その医者はどこにいる?」

「ナースセンターにいると思います」

石井は、ナースセンターに足音を出さず、早足に行く。

ナースセンターには、髪を束ね背の高い白衣を来た女性が看護婦と話している。

「すみません。警察の者ですが、精神科の先生はおられませんでしょうか?」
丁寧に言った。

「はい。私ですが……」

映画のワンシーンでも見ているかの様な、精神科の女医が石井の方を向いた。 
あまりにも清楚な風貌に石井はたじろいだ。

「あのー…白鳥由香さんの病状をお聞きしたいのですが?」

「まだ、診察の途中です。六時に、お話しますので、お待ち下さい」
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