アバター
声を出しても、出ない。身体も金縛りにかかったように動かない。目だけが動く。周囲を見ても自分のアバターを誰も気づいてない。

「フフフ……。お前は私について来い」

優子の身体が自分の意思に反して、スーと立ち上がった。

「フフフ……。料金を払え」

優子は、アバターが言うままに動く。

「フフフ……。会社に帰って。社長を殺せ!」

優子は、必死で逆らっているが、身体が言うことをきかない。
優子は回りの人に何度も「助けてー!」と叫んでいるが聞えないようだ。

前を行く、自分のアバターに、
「私のアバターさん、お願いやめて」と何度言ってもダメだ。

道玄坂を上りきったオフィスビルに優子の会社がある。

大きなガラス戸を開け。

ゆっくりと階段を上がってゆく。
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