アバター
脳内システム
石井は、どうしようもない苛立ちにさいなまれている。

犯人像すら見えない。手口は類似しているがそれぞれが微妙に違う。同一犯なのか、それとも犯人はいないのか全く分からない。犯人がいたとしてもどうやって殺人、自殺に追いやったのか見当もつかない。小林は怨念と馬鹿な事を言っているがそれしか説明がつかない。ひょっとして新種のウイルスに感染して、突然、狂犬病患者のように殺人、自殺をしたのか。
唯一、生き残った由香が頼りだ。その母にもう一度、事情を聞きに石井は戻っている。そして、この事件について磯山医師に精神科医としての意見を訊こうとしている。


由香の病室の前には、誰も座ってない。桜田はどうしたのか。石井は由香の部屋をノックした。

「はい」と桜田の声がした。

「石井です」

「どうぞ」
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