コイビト未満


「あれー菜成、飲んだ?フラフラしてる」



梨羽と別れ、ネガティブ全力で家に帰ると

家の前でバイト終わりの葵と一緒になる



葵の姿を見るたびに、
これ以上近づいちゃダメだっていう思いと
葵に触れたいっていう疚しい思いが交差する




「んー少しだけ、明日も実習だし」

「少しだけって…また酔っ払ってんじゃんー
酒弱いくせに飲んでんじゃねえよ
ほら、行くよ、捕まって」


千鳥足の私に差し出す手




こういうところで、

大丈夫、一人で帰れるから

って言えたら スマートなのに



どうしても甘えてしまう



言葉では言えなくても



差し出した手をぎゅっと繋いでしまう


それで葵は分かってくれるの


何も言わなくたって




私が葵を求めていること




< 136 / 433 >

この作品をシェア

pagetop