泡影の姫
プロローグ
小さな頃から人魚姫の話が大好きだった。

お姫様の出てくる話ならほかにいくらでもあるでしょう?

って大人は顔をしかめたけれど、それでも私は人魚姫が好きだった。

結末が残酷だ、なんていう人もいるけれど、自らの意志を貫いた彼女は幸せだったのではないかと私はそんな風に思っていて。

恋心さえまだ知らなかった子供の私には。

その生き様はカッコ良く見え、憧れた。

好きな人の幸せだけを願って、泡になったその瞬間。

彼女は一体何を思ったのだろう?

私は水の中で、自分の口から漏れ出た空気の泡を眺めてそんなこと思ったこともあった。

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