泡影の姫

1章―そして、私は君に出会った

0.数秒の世界。

それが〝私の全て〟だった。

だけどそれはほんの数カ月前までの話。

私は当然のようにそこに存在する『自分の世界』が、

何の前触れもなく突然崩壊するなんてことを、

訪れるその瞬間まで想像したことがなかった。

よく言えば、純粋。
悪く言えば、愚かで滑稽。

だけど、私は本当に〝永遠〟を信じられるくらい、光と希望に満ちた日々を生きていたのだ。

明日は今日の延長上に存在するものだと。

一度だって疑ったことはなかった。

だからそれが〝間違いだった〟のだと思い知った時には、もう何もかもが手遅れで。

信じられない、と。
信じたくない、の狭間で押しつぶされそうになりながら、

突然の訪れた『世界の崩壊』で私は初めて気づく。

私がそうだと信じてきた世界はあっけないほど脆くて、いつ失ってもおかしくないものだったんだって。

今更、だって自分でも分かっている。

私はなんて〝無知〟だったんだろう？って、
自分の中にいるもう一人の私が私を嘲笑う。

私が失ったものは、もう二度とこの手に戻ってこない。

そんな残酷で暗く冷たい現実を受け入れろって？

そんなの、無理だよ。
夢であればいいと願って、祈って、朝起きるたびに痛みと共に突き付けられる受け入れられない現実に私は幾度となく絶望させられて。
私の世界に日は差さない。
どん底で、最低で。

『神様はなんて残酷なんでしょう？』

私に聞こえるようにそんなセリフを言わないで。
そんな言葉何の慰めにもならない。
こんなことになるなら、いっそのこと。

『誰か、私を殺して』なんて。

他力本願な願いを口にしそうになる。
消極的自殺願望。
そんな自分でもコントロールできない真っ暗な心を引きずって。
私が信じていた世界以外で生きているという現実が、今はただ重かった。