泡影の姫
2章―だから、私は君を探す
湊とはあれ以来会うことはなかった。
いつもの駅にも、それ以外にも、この夜の街のどこを探しても、湊の姿はなかった。

会う理由は得にない。

けれど無性に彼が恋しく、そして会いたいと思った。

会って彼の歌声が聞きたい。私が湊を探すには十分な理由だ。

なぜ、あの時彼はごめんなどといったのか?

私はその理由を知りたい。

ただあの時は聞けなかったのだ。何かが壊れてしまう気がして怖かった。
次ぎ会える保証などどこにもなかったのに、また会えると勝手な思い込みをして、結局見つからなくて。

私は明日が今日の延長線上にないと知っていたはずなのに、気付けば湊を探している有様で……。

自分の学習能力のなさに呆れながらそれでも思うことはもう一度、湊に会いたいということだけだった。
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