泡影の姫
湊と出会った夏が終わっても、私は彼を探し出すことはできなかった。
私は夏休みが明けたと同時に普通科へと転科した。
いつまでもスポーツ科に籍を置くわけにはいかなかったし、いつまでもこの問題を先送りにしておくわけにもいかない。
決めてしまえば、あとは簡単だった。
やっと学校に出てきた私を一部の先生は不憫に思ったのか、マネージャーとしてスポーツ科に残る選択肢もあると教えてくれた。
新たな選択を天秤にかけて、私はその申し出を丁重に断った。
誰かの支えになれるなら、それはそれで素晴らしいことだろう。
でもきっと私には耐えられない。
今の私はまた選手でなくなった自分を受け入れることに精一杯で。
とてもじゃないけどマネージャーとして他人のサポートをしながら残された学校生活の間ずっとプールを見つめ続けることに耐えられる気がしない。
一つずつ、できることからやり直してみようって決めただけで具体的にはまだ何一つ決められていない。
とりあえず学校に登校できるようになっただけでも私は自分に花丸をあげたいくらいだ。
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