前を見すえて
雨が降っていた。

さっきまでは小雨だった。



「やだぁ。雨だゎ」


僕がいま、雨宿りしているところの横に
女のひとが立っていた。


僕は立ち上がる。


「このタオルどうぞ。」


差し出すと
その人は笑った。


「いいんですか?」



「はい」


「ありがとうございます」


僕より年上だな。

直感で思う。




「すいません。タオル..........」



「いいんですよ。僕、ここに勤めてるんで」


勤めてるわけじゃないか........。



「じゃ、ここにまた返しに来ますね」



「あー・・・・・・ありがとうございます。
でも

気にしなくていいですんで。」




「いいえ。..............あ。」



その人が声をあげると、


雨が止んでいたのに気づいた。



「止んでますね」




「そうですね」




「タオルありがとうございました。でゎ、また」




「はい。」




その人はまた笑う。




もう僕にはできない.........純粋な笑みで。





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