あなたに送ったものでした
スタジオに行きたいとのことだったけど、夜さんはすでにスタジオに連絡してくれていたらしい。

でも予約が取れなかったみたいだ。

「でもせっかく秋葉原なんだから、家電屋に電子ピアノがあるかも」

そう夜さんに言われ、私たちは駅の隣りにある大きな家電屋に向かった。

エスカレーターで電子楽器がある階まで辿り着き、夜さんの後に続いて歩く。

途中にゲームコーナーが目に入る。

夜さんはこういうの、しないんだろうな...そう思った矢先、

「うわ、PS3欲しーっ」夜さんが言った。

意外すぎる。

「夜さんてゲームするんですか?」

「めっちゃやるよ?PS派だけどね」

「うわー、私もかなりやるんですよ。PSも任天堂もいけます!」

夜さんがゲームをやるなんて、ちょっと嬉しい。

また後でゆっくりゲームの話をしよう。


歩いていくと隅のほうに電子楽器のコーナーがあった。

一番場所を取っているのが電子ピアノで、所狭しと様々なメーカーの物が並ぶ。

「おー、よかった!あったね~」

「そうですねー!」

「じゃ早速、何か弾いてみてよ」

う゛...

困った。

わかっていたことだけど、何を弾いていいかわからない。

私は固まってしまった。

どうしよう?

「じゃあさ、さっきの2曲目弾いてもらえるかな?」

夜さんが気を利かせてくれた。

「わかりました!伴奏とメロディー付きはどっちがいいですか?」

「伴奏でいいよ」


お店の中で弾くなんて気が引けたけど、精一杯やるしかない。

もしも夜さんに断られたとしても、後悔はしたくないから。


私は気合いを入れて手を構えた。


特にミスなく最後まで弾けたけど、緊張して指が少しもつれてしまった。

あちゃー、と思った。

夜さんを失望させてしまったかもしれない。
< 11 / 20 >

この作品をシェア

pagetop