僕のイケナイ先生(→『信じられない彼女ー僕のイケナイ先生』から改題)
(一の三)女の対決
「合わないなぁ」

横山容子先生は、開口一番玲緒
奈先生にそう言った。

一体何が合わないのと言いたげ
に、玲緒奈先生がきっと口を
真一文字に結んだ。

あたかも、特別採用と特別管轄
の教師同士の対決となりそうな
雰囲気。

きつい視線が交差する。

傍らの学年主任が、ドギマギし
て、「横山先生、こちら松先生
の…」と目配せしながら、教免
を机の上で押しやる。

玲緒奈先生は、一種教諭となっ
ている、トッカンだ。

公務員一種と二種の違いのよう
なものだが、現実には、キャリ
アとノンキャリアのような待遇
に差がある訳じゃなし。

横山先生のように、二種でも、
校長先生の娘といって、幅をき
かす教師がいるのが、現場だ。

生徒には、そんな事は分からな
い。

休職中の緒田っちと呼ばれる英
語科主任と横山先生の間の、一
種と二種の対立が、そのまま持
ち越された感じ。

でも、この対抗意識は何?

容子先生は二種とは聞いていた
が、それだけだろうか。

大体、教師が不意に次々倒れて
辞めていくなんて、委員会や大
学で監査にくる位の、何かが、
ある筈だ。

校長先生は、至って口が固く、
拉致があかずに時間が流れ、こ
うして玲緒奈先生もまた派遣さ
れてきた位だ。

立星では、学園の何かを、謎に
包んで隠している事は、確かだ
った。

まだ、この初顔合わせでは、玲
緒奈先生は、横山容子先生が
佐藤校長先生の娘とは知らない。

イケ先容子の独裁体制ぶりで、
他の若手教師のように、おべっ
かを使う事はしなかった。

一通りの挨拶が終わった後、学
年主任が席を立った。

学年主任は三十路終わりに差し
掛かる訳知りで、内心はらはらしていたが。

2人の女先生は、教職員室の傍ら
の応接室に残ったまま。

横山容子先生から、口火を切っ
た。









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