新撰組異聞―鼻血ラプソディ
150年――先の世界から持ち込んだ俺の荷物。

鞄や袋の中身を整理して、部屋の隅に置く。


沖田さんも土方さんも、お母んや姉ちゃんに比べたら数倍も数百倍も綺麗な人だ。

俺はあんな透き通るような女性を、見たことがない気がする。


あ……その……。

まともに顔をみる機会もなかったのは確かやけど……。

顔とかスタイルとか関係なく、生死を賭けて時代の流れに抗って、突き進んでいく覚悟とか、そんなものが凛と輝いて見えているのかもしれない。



胴着と袴を着て、竹刀を持って薄暗い廊下へ出る。

沖田さんがお盆に、小皿に乗せたお饅頭とお茶を淹れ戻ってきた。



「土方さんからもらっちゃった」


嬉しそうに、お饅頭をツンツンつつく。


俺が鼻血で汚した着物と袴を着替えた沖田さんからは、なんとなく陽の匂いがする。


縁側に腰掛け、沖田さんはお饅頭を頬張る。


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