新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「総……翡翠の剣は150年先の剣。
直心影流(じきしんかげりゅう)――柳生宗厳(石舟斎)が相伝された新陰流が長い時を経て進化してる」



「進化してる?」


「稽古法、鍛練法、規則も今とは違う時代の……今日、総が翡翠に見せた技。
それを受け止めた翡翠が明日どう動くか。
わたしはワクワクしてる。総はどう?」


土方さんは目をキラキラさせている。


「総……本気で、一切加減しないこと。
武士の、剣士の誇りをかけて全力で戦いなさい」


「土方さんっ」


土方さんは触れれば切れる、研き抜かれた刀のような気迫で言う。


「総、試合ではなく死合いをしなさい」


死合い――。
という言葉にゾクリとする。


全身が象毛立つ。


土方さんは言葉の内に、何かを秘めている。


壬生浪と恐れられることに慣れて、稽古が散漫になっている隊士たちも多い。



< 40 / 164 >

この作品をシェア

pagetop