新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「目の錯覚――。
竹刀の先を利き目に向けることで、実際にいる位置よりも、前に居るように見える。

もう1つ、間合いを詰めることで、利き目に向けた竹刀が向かってくるように見える」


「……先に仕掛けるよう仕向けた?」


「ええ、仕掛けた沖田さんの竹刀が当たらないスレスレまで、間合いを詰めて」


「!!!……上段から面に、竹刀を置いた!?」


「ご名算です」


「総を……相手に……」



「沖田さんは、死合いの前に、俺と山南さんの試合を見ていましたよね」


「確かに、初めから見ていた」



「沖田さんはあの試合で、俺が返し専門だと思ったのかも……。

目隠しした俺には、山南さんの気配と声が頼りだった。

もし、沖田さんが山南さんとの試合を観ていなかったら……俺はこてんぱんに負けていますよ」


斎藤さんがゴクリと喉を鳴らす。



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