(仮)
プロローグ
「違う!! もっとなめらかに指を運びなさいっ!」
「はっ、はい・・・!」
全然足りない偏差値。
「そうそう、英語の発音にもポイントがあるのよー」
「は、はい!」
昔の感覚と知識と詰め込んだ情報に頼りきる。
急ピッチでつくりあげていくセンス。
「おっけぃ! これで一通り終わったわ」
「はーー・・・ 終わったーーー・・・」
終わった達成感。
疲れた体と脳からすーっとなにかが消えていく。
「一応言っておくけど・・・」
釘をさすような口ぶりで女性は話す。
「これは賭けのようなものよ、うまくいくかかどうかなんて私にもわからない」
少し間をあけて、女性はまた話し出す。
「・・・けど、あなたは頑張ったわ。 きっと、うまくやれるわ」
ちら、と視線をよこすと
真摯な眼差しが自分に向けられていた。
・・・あ、知ってる。
この目は。
信頼してる目。
今だけじゃない、今までに何度も何度も私は向けられてる。
同年代の子の誰より、誰よりも私が一番知ってる。
「・・・ありがとうございます。 必ず、やりきってみせます!」