(仮)

入学


着慣れてない、ブレザーの制服。

まだ短くしていないスカートに、きちんとつけたリボン。


そして、似たような子たちが周りにもたくさんいる。

その子たちは、嬉しそうに笑顔を浮かべて、両親と写真をたくさん撮っている。

満開の桜がやたらロマンチックに見せる。


・・・幸せそうだなぁ。


家族って感じがして。

う、羨ましくなんかないよ!

ただ、お母さんは仕事が忙しくて来れないだけだし!

・・・。

・・・やめとこ。 悲しくなるだけだし。


反射的に下を向いて、機械のように生徒玄関に向かう。


校舎の中に入ると、校門前より騒がしさが増した。

ところどころから指示を出す声も聞こえる。

なんだろう、と思った矢先に「生徒会役員」と書かれた腕章をつけた人が

早足で過ぎ去っていった。

入学式準備で忙しいんだなぁ。

もちろん、家族連れの新入生たちのほうが人数では圧倒的だった。


真新しい内履きに足を通したところで

明らか先輩だとわかる男の人たちが玄関入ってすぐの廊下で笑い、大声で話している。

役員の腕章をつけていない。

制服も若干着崩している。

こういうのって、高校でもいるもんなんだ。

いわゆる、なりきれない不良って感じ。

すごい邪魔だなぁ。

ま、そんなこと言ってもどいてくれなさそうだし、からまれそうだし。

そっちのほうがメンドくさいし。

「えっ、キミ、新入生? すっげぇ大人っぽいから、先輩かと思ってビビっちまったよ!」

「あはは! ここらは俺らと生徒会のやつらしかいねーよ」

「えっ、マジ!?」

「マジマジ。 ね、入学式終わったら一緒に遊びに行かねー?」

新入生をナンパしてるし。

しかも文句が弱っちぃヤンキーみたい。

あ、ヤンキーでもないか。

って! 

盗み聞きしてる私も大概!

けど気になる・・・。

そっと聞き耳を立てながら、スローペースで歩く。

「あ、ごめんなさい。 あたし、大学生の彼氏いるんです」

さらっと言ったけど、

だ、大学生の彼氏とか・・・

大人っぽすぎる・・・!!!!!

どんな子なんだろ?

ちらっと興味本位で女の子のほうを見てみる。

ふんわりウェーブがかかった魅力的な黒髪。

醸し出す雰囲気がその人の周りだけ落ち着いてる。

「それに、あたし、2つ上なくらいじゃ男友達としてしか見れないんです。 ・・・本当にごめんなさいね」

・・・す、すごい大人っぽい!!!!

聞いてるこっちが大人の余裕に惚れてしまいそう!

「ちっ、なんだよ、今日はすげぇ失敗続きじゃねぇかよー」

「つまんねーな」

先輩たちは興ざめしたトーンで、そそくさと廊下から退散していった。

・・・校舎入ってすぐに、いいものを見てしまった!

お、恐るべし高校。

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