(仮)

そんなことを思っているうちに、あの女の人が

颯爽と廊下を歩いていく。

かっこいいなぁ。

ちょっと前まで中学生だったなんて考えられない。

頭良さそうだし、きっとレベル高い普通科の生徒なんだろうなぁ。


そのとき、ポケットにいれていたスマホがぶるぶると振動した。

「はいはいー」

人がいるわけでもないのに、反射的に返事してしまう。

画面を見ると、透さんからの電話だった。

「はい、もしもしーっ、透さん?」

『あっ、純? 元気? 機種変してから一度も電話かけてなかったよねー』

「あー、そういえばそうですね。 メールは結構やってましたけど。 で、今日はどうしたんですか?」

『純、高校合格したって言ってたよね?』

「え? はい、で、今日・・・ というかあと20分くらいしたら入学式始まりますよ」

『マジかー、よかった。 あと5分くらいでそっちつくんだけど、玄関ところに純いてくれない?』

「えっ!!? 今から来るんですか!?」

『うん。 行っちゃダメ?』

「別に、ダメってわけじゃないですけど・・・ ちゃんとスーツとか着てきてくれてるんですか? タトゥーまるだしファッションとか、やめてくださいよ?」

『やだなー、ちゃんとスーツだよ! 知り合いのヤクザくんから貸してもらったんだー』

「そうですか。 透さんが来てくれるなんてうれしいです! 校門にいるんで、早く来てくださいね!」

『りょーかい。 あと、愛優未と蒼も来るからねー、じゃ、また!』

ぷつっ、と切れた。

久しぶりに透さんに会うなぁー

受験するって決めてから、一度も会ってない。

愛優未も、蒼も。

私の、いわば家族みたいな人たち。

お母さんはいないけど、みんなが来るなら全然気にならない。

すっごいうれしい。


私は、電話を受けてからユーターンして玄関に向かった。
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