1%のキセキ

幼い頃からよく見知った西川家の人達。
そこにこれからは彼が加わるのだ。

母親は変わらず西川家の人達と近所付き合いを続けるだろう。
だけど、俺はこうして、また会ったりするのだろうか。

今までずっと疎遠だった。
だけど彼が加われば、それは更に決定的になる。

……どうして今更こんなタイミングで再会なんてしてしまったのだろう。

杉山さんは、未結には申し分ない絵に描いたような良い人だ。
そこに何の不満も不足もない。


……あぁ、早く結婚式が来ればいいのに。

さっさと人のモノになってくれれば、こんなもどかしい思いはしなくて済む。

嫉妬はしていない。
だけど、こうやって未結と真結ちゃんと、佐智子さんと顔を合わせるとちょっと侘しい気持ちになる。
昔から仲の良かった家族に加わるのは俺じゃなく、彼だということに。


「ほら、みゆちゃんいっぱい食べてねっ」

テーブルの上に並んだ数々の料理。
その中には作り過ぎたと嘆いていた餃子もあった。

そんな中から母親が、未結に煮物を取り分けていく。
人参、じゃがいも、そしていんげんと椎茸。

未結の顔をちらっと見る。
変わらず笑顔を浮かべ、ありがとうございます、と取り分けてくれるのを待っている。

……椎茸、食べれるようになったのか。

昔はあんなに毛嫌いして、給食に出る度こっそり俺の皿へ入れていたのに。

だけど、一瞬顔が曇ったのを見逃さなかった。

なんだやっぱりまだ苦手なんじゃないか。

しかし、なんで、佐智子さんは言わないんだろうか。
昔からの付き合いとは言え、気を遣って言えないのか?

今この場で未結が椎茸が苦手なことを知っていて、それを気兼ねなくうちの母親に言えるのは身内の俺だけ。

どうしよう、口出ししようか。

きっと未結は気を遣って無理してでも食べるだろう。

俺は、さり気なく、母親に言った。


「……椎茸ダメだって」

「あ、そうだっけ?ごめんごめんっ。さっちゃんも言ってよー」

そう言って小皿から椎茸を除いていく。

「いや厳しくいかないとね、この年になってもまだ好き嫌いなんて恥ずかしい子だわ、本当。しかしよく宗佑君覚えてたわねー」

「給食の時よく自分のところにこっそり入れられましたから」

そう言って未結を見て意地悪く笑う。
すると顔を赤くして怒った。

「もう、昔の話でしょっ!」

そんな俺達にとっては何気ないやり取りだったのに。
俺はこの時、何も知らなかったのだ。

密かに、誰かの妬みを買っていたなんて。

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