1%のキセキ
服の上から太ももに奴の手が這う。ゆっくり撫でまわされ、思わずゾっとする。
「栞ちゃんのとこの薬さ、かなり優遇してうちで使ってるんだよ」
「あ、ありがとうございます」
「君が熱心に話してくれるからさ」
嘘だ、私の話なんてまともに聞いたことないくせに……っ。
太ももを撫でていた手が私の腰に回される。
そのまま抱き寄せられ、顔が近づいてきた。
キスされそうになってすかさず顔をそらす。
少しでも、距離を取ろうと先生と私の間に手を置いて、先生の胸元をぐっと押して抵抗した。
「すいません、今日はお話を聞いて頂けるということで来たのですが……っ」
「分かってるって。ちゃんと後で話は聞いてあげるからさ」
そう言って私のジャケットのボタンを外すと手を入れてきた。シャツ越しに彼の手の感触が伝わる。
気持ちが悪くて、全身に鳥肌がたった。
だめだ、限界だ。
「あ、あの、」
そう言いかけた時、そんな彼の行為を、コンコンというノックの音が中断させた。
居留守を使うつもりで、しんとする部屋。
今大声を出したら助けてくれるだろうか。
だめだ、そんなことして、うちの薬を打ち切られたら今までの努力が全て水の泡だ。
すると、扉の向こうの人物はガチャガチャとドアを開けようとする。
不審に思ってくれただろうか。電気がついているのに、鍵がかかっていることに。
どうかお願い、助けて……っ
声に出せず、心の中で懇願する。
「安生先生いらっしゃいますか?すいません脳外の桐山なんですが」
扉の向こうの人物は、先日勝手に助けに入ったあの医者だった。
邪魔しないでと、いつか言ったことを思い出す。
愕然とした。
そうだ、彼は私がここにいることに気付いたとしても、きっともう助けてなんてくれない。