私と彼の恋愛理論
すぐに、尚樹が私の体を抱き寄せる。

腕を絡めて、しっかりと体を密着させた。

「尚樹、ありがとう。」

「何のお礼?」

「うーん、いろいろ?」

今日一日で尚樹に感謝することが多すぎて、私は乱暴だと思いつつ、まとめていっぺんにお礼を言ったのだ。

「そうだな、確かに感謝してもらわないと。浮気も見逃した訳だし。」

私は目を見開く。まさか、皆川とのことを尚樹が知っているとは思わなかった。

「俺、かなり凹んだんだけどな。お前が男と歩いてるとこ見かけて。しかも、相手の男はお前が好きそうな年上の優男だったし。」

意地悪く笑った尚樹に向かって、弁解する。

「彼とは何も…」

「冗談だよ。ただの友達なんだろ。お前の、ほら職場の友達に聞いた。」

「え?里沙?」

「そう、この前、偶然ばったり会って。」

どうりで尚樹が突然現れても、里沙が平然としていた訳だ。

「いい友達だな。」

「うん。」

「俺も感謝しないと。」

里沙が何を話したのかは分からないけれど、きっとうまく言ってくれたのだろう。

彼女の、クールそうに見えるけど、実は人情に厚い性格は、私もよく知っている。

親友に感謝しながら、私は最愛の恋人の腕の中で再び眠りに落ちていった。
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