私と彼の恋愛理論
父はこういう人間だ。

無駄なことやまどろっこしいことが嫌い。

いつでも、情緒やムードなどお構いなしだ。

そして、僕もこの人の息子なのだろう。

望むところだ、質問してやる。



「10年間、赤ちゃんができなかったの?それとも、避妊に失敗しただけ?」


それは、僕が一番聞きたかったこと。

なぜ、僕が生まれてから10年も経った今、お母さんが妊娠したのか。

僕の頭で考えられたのは、二つの可能性。

欲しくてもできなかったという可能性と、欲しくなかったけど出来てしまったという可能性だ。

どうせなら、一つ目であってほしい。

僕の弟か妹には、一点の曇りもなく望まれて生まれきたのだと言ってあげたかった。

「最近の性教育は進んでるな。いい傾向だと思うよ。」

そういって笑うと、僕の質問の意図を理解したのか、お父さんは真剣な顔で話し始めた。

「正解は一つ目だな。10年間、できなかった。」

僕は望んでいた方の答えであったことに、安心した。それだけで十分だったが、お父さんの話は続く。

「お前は結婚してからすぐに授かったのに、二人目はなかなか授からなかった。原因は病院で検査していないから分からない。特に気にしてもなかった。お前もいたし、二人目もそのうちできたらいいなくらいの気持ちでいたんだ。だから、間違っても避妊に失敗したわけじゃない。だいたい、俺は結婚してから一度も避妊したことはない。」

「え?そうなの?」

なんでそんなことまで僕に話すのか分からないけど、堂々と父親は言い切った。




「だって問題ないだろう。夫婦だし、俺はまどかを愛してるし。」


< 72 / 98 >

この作品をシェア

pagetop