臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 接戦なのもあってか、康平は緊張していた。チームの足を引っ張りたくはないので、ミスだけはしないようにと何度も心に言い聞かせる。

 やや後方にいる亜樹は、明らかに固くなっている康平へ、少しでもボールに慣れさせようとパスを出す。

 ボールはセンターラインを越えて康平に渡った。

 雰囲気に慣れるまでは、少しでもボールを持ちたくない康平だった。周りを見る余裕も無く、すぐに亜樹へパスを返した。

 驚いた亜樹は、急いで前に出ながらパスを受け取ったが、その瞬間ホイッスルが鳴る。

 二年の男バスの審判が、それぞれのコートを指差して宣言をした。

「バックコート・バイオレーション!」

 センターラインを基準として、攻撃側のチームが相手方コート(フロントコート)から自分のチームのコート(バックコート)へボールを戻してはいけないというバスケ特有のルールがあった。

 ボールは相手方に渡った。サイドからのスローインになる。


 ルールを思い出した康平は、額に手を当てて天を仰いだ。

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