臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
亜樹の機転
 長瀬に励まされてオフェンスに加わった康平だったが、完全に萎縮していた。


 亜樹から村田、そして長瀬の順でボールが渡り、彼のシュートで一組に点が入る。

 急いでゾーンディフェンスを組もうとする四人へ、亜樹が少し早口で言った。

「お願いがあるんだけど、長瀬は五番、夏美(村田)は六番、敦子(山根)と康平は七番のマークをしてくれない! ……点を取られたら私の責任でいいからさ」

 三組は黄色のゼッケンだが、女子バスケ部員は五・六・七番を付けていた。康平達一組は赤のゼッケンである。


 長瀬は、亜樹の意図をすぐに理解したようで、
「オッケー、ボス!」
と笑顔で答える。

 長瀬に釣られたように、バレー部の村田も無言で頷いた。


「私達ビギナーコンビも、ボスに従いましょ」

 山根に肩を軽く叩かれた康平は、彼女と七番のマークに付いた。

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