恋?未満
8月
 やっと見つかった安くていい物件。

なんとか8月末、引越しが決まった。

そんな8月の始め。

大きな台風が、ここにも来る。

大災害を起こしたその台風が、

明日、この辺りをも襲うという前の日。

風が次第に強くなり、小雨も降ってきた朝9時すぎ。

非常階段で煙草を吸っていると、彼女が来た。

いつもとは違うTシャツにジャージ姿。

雨風が吹き込む非常階段で、

唯一、人ひとり濡れない場所を彼女に譲ろうと、

踊り場の隅に場所替えをした。

彼女は俺の肩が濡れるのを見て、

「いや。大丈夫っす。どうせ濡れてますから。」

と、唯一、男の俺に濡れない場所を譲り、背中を向けた。

その背中になにも返せない俺が居た。

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