恋愛事案は内密に
「え? むつみさん、何言ってるんですか」

「迷惑かけてばかりで」

「せっかく会社に慣れてきたのに」

「契約満了まで頑張りますから」

「これから覚えてもらって、こちらもいろいろ知ろうとしていたところなのに」

「えっ」

「会社にとって必要な人材なんですよ、むつみさんは」

「所長……」

「まずはじっくりやっていけばいいんですよ。前の会社の経歴があるじゃないですか」

「……それは」

「立派ですよ。少しずつでもいいので、それを生かして業務遂行してください」

「ありがとうございます」

コンビニの前にたどり着いた。

「一緒に帰りたい、ところです」

またあのときの残念そうな顔をする。

私はどういう言葉をかけたらいいのかわからず黙ってしまった。
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