あの頃の君へ



「色?拓真は何色なの?」



「俺は……」



間もなく家に着く。



そんなとき、後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。



「拓真くん!」



二人で振り返ると、そこには長い髪を綺麗にカールさせた女の人が立っていた。



どこかで見たような……?



「森下?」



拓真がそう言うと、その人は涙ぐんで勢いよく拓真に抱き付き、私と繋いでいた手は離れた。



「拓真くん、元気だったんだね!連絡くれないなんて酷いよ!私、あの時から拓真くんのことずっと……」



そのまま拓真に抱き付いたまま、ワーワーと泣き出す彼女。


その横顔を見て私は思い出した。



私が気持ちを封じ込めたあの日、拓真に告白していたのがこの森下さんだった。



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