世界でいちばん、大キライ。
テーブルに置いて差し出された紙袋に、そっと手を伸ばして少し引き寄せ礼を言う。
未だにコーヒーに手を伸ばしていない水野を見ると、いつも堂々としている大人の彼女でも緊張しているのかもしれない、と久志は思った。
両手を行儀よく膝の上に乗せたまま、やや俯いた姿勢で構えている水野に、久志は普段出さないような柔らかい声色で話を切り出す。
「この間も、わざわざ麻美に服とか色々ありがとう」
「いっ、いえ……」
その低く滑らかな声に、水野はドキッとして顔を上げた。
久志は水野と久方ぶりに目を合わせると、逸らすことなくそのまま続ける。
「あの時の……ずっと返事とか流してて、悪かった」
手にしたままのコーヒーを、コン、とテーブルに戻して視線を落とした。
手元を見つめて、久志は正直な気持ちを吐露する。
「そんなふうに想っててくれたなんて、本当にありがたいんだけど……でも、水野さんの気持ちには応えられない」
そうしてまた、真っ直ぐと水野を見ると、傷ついた顔で笑って目を伏せた。
「そうですよね。いくら歳下とはいえ、ふたつしか違いませんし、子どももいる私なんて」
「いや」
好きとかそれ以前の問題なのだと水野は勘違いをして言ったことを、久志が真顔で即否定する。
その久志の一声に、水野は目を開けて揺れた瞳をのぞかせた。
「歳とか子どもとか。そういうんで決めたわけじゃないから。水野さん、十分魅力的な人だと思うし」
深い付き合いではないが、それでも久志はこんなことを口にするような男ではないことくらい、水野にもわかる。
だからこそ、この予想外の久志からの言葉に驚いて、茫然としてしまう。
そんなことに気付かない久志は、ただ、苦手な言葉を駆使して自分の思いを伝えることだけに必死だった。
未だにコーヒーに手を伸ばしていない水野を見ると、いつも堂々としている大人の彼女でも緊張しているのかもしれない、と久志は思った。
両手を行儀よく膝の上に乗せたまま、やや俯いた姿勢で構えている水野に、久志は普段出さないような柔らかい声色で話を切り出す。
「この間も、わざわざ麻美に服とか色々ありがとう」
「いっ、いえ……」
その低く滑らかな声に、水野はドキッとして顔を上げた。
久志は水野と久方ぶりに目を合わせると、逸らすことなくそのまま続ける。
「あの時の……ずっと返事とか流してて、悪かった」
手にしたままのコーヒーを、コン、とテーブルに戻して視線を落とした。
手元を見つめて、久志は正直な気持ちを吐露する。
「そんなふうに想っててくれたなんて、本当にありがたいんだけど……でも、水野さんの気持ちには応えられない」
そうしてまた、真っ直ぐと水野を見ると、傷ついた顔で笑って目を伏せた。
「そうですよね。いくら歳下とはいえ、ふたつしか違いませんし、子どももいる私なんて」
「いや」
好きとかそれ以前の問題なのだと水野は勘違いをして言ったことを、久志が真顔で即否定する。
その久志の一声に、水野は目を開けて揺れた瞳をのぞかせた。
「歳とか子どもとか。そういうんで決めたわけじゃないから。水野さん、十分魅力的な人だと思うし」
深い付き合いではないが、それでも久志はこんなことを口にするような男ではないことくらい、水野にもわかる。
だからこそ、この予想外の久志からの言葉に驚いて、茫然としてしまう。
そんなことに気付かない久志は、ただ、苦手な言葉を駆使して自分の思いを伝えることだけに必死だった。