世界でいちばん、大キライ。
「それ、一応今の私のトップシークレットだったのに」
「……そんなん、聞かなくてもなんかわかるし」
「うそー……」

愕然として、力なく冷えたカップをガタッと置くと、今の小学生は大人の恋愛事情にも感が鋭くて、さらにその大人(じぶん)の気持ちを見透かされていたということに、羞恥心を感じずにはいられなかった。

「……変なひと」

対して、正面に座る24と自己紹介した大人が、コドモの自分に対等に向き合っている姿に驚いてそう表現した。
今まで出会ってきた大人の女性にはいなかったタイプの桃花に、正直麻美は、嫌な気持ちにはならなかった。


「一応送るね。大人の責任として」と、桃花が言うと、麻美と肩を並べてカフェから自宅へと歩いていく。

以前、デリバリーしたときに知った、久志と麻美の自宅。
本当に近い距離の間、ふたりはまた会話を重ねていく。

「……『ワケあってヒサ兄のとこにいる』って、なんでかとか聞かないの?」
「え?うーん……そりゃあまぁ……気になるけど……あ、あれだ! 次、ココアを飲み交わしたときにでもちょっと突っ込んで聞いてみようかな」
「なにそれ」
「だっていっぺんにずかずか踏み込まれるのって、イヤじゃない?」
「今も今度も一緒だと思うけど、あたしは」

つん、と顔を背けながら言われてしまうと、桃花も苦笑するばかりだ。
すると、信号で立ち止まった時に遠くを見つめたまま麻美が開口する。

「……一年間。一年間だけ、ヒサ兄にお願いしたの」
「一年間……?」

ほとんど車通りのない道路で、急いでる時ならば走って渡ってしまうようなもの。だが、ふたりは言葉を交わすことに集中していたのでそれをせずにいた。
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