櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ




 目的を与えれればいいと、そう思った。






 私だってずっと孤独だったから。





 ある日目が覚めたら、記憶がなかった



 真っ白な部屋に、見たこともない人がいた



 家族も両親もいないと言われた



 誰一人知らない人達に『私』を教えられた



 お前は『雪乃ルミ』だと



 『私』はいつも一人だった



 自分の、周りとは全然違う異様な容姿も大嫌いだった



 誰の中にも『私』の記憶はなくて



 『私』の中にさえ『私』自身の記憶はない



 誰の思考の中にも居ないなら



 一体誰が『私』を思い、必要としてくれるのだろう



 私の生きている意味は何なのだろう



 孤独の中で私を支えてくれたのは一つの"声"



 夢の中で響くそれは、いつも同じことを繰り返す



『運命に抗うな
 例えそれがどんなに辛く悲しいことで 
 信じられないほどに悲痛で苦しい結末でも
 抗うことは許さない
 思いのままに謳え
 思いのままに躍れ
 思いのままに
 それを、運命を、全うせよ』



 命令に近いそれは



 まるで、空っぽになった人形を動かすように



 『私』に暗示をかける



 感情なんてなくたっていい



 思い出なんて残ってなくてもいい



 ただ前を向いて歩いていけばいいと



 どんなものが道を塞いでいたとしても



 力の限り乗り越える



 それだけでいいのだと





 随分と一方的で身勝手な命令



 それでも、何も拠り所が無いよりましだった



 生きていく為の目的があれば、それだけで





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