薫子さんと主任の恋愛事情
薄すぎず厚すぎず、それでいて柔らかで潤いのある唇と、もう何度となくキスをした。最初の頃こそ緊張や戸惑いのあったものの、今では大登さんの首に腕を回し彼の要求に応えようとする自分がいる。
でもそれが精一杯というか、それ以上なんて考えたこともなくて。麻衣さんに言われるまでそれで満足していたし、大登さんの気持ちまで考える余裕もなかった。
大登さんはそれ以上を、私を欲しいと思っている?
そんなこと大登さんの唇に聞いたところでわかるはずもないのに、自分でも気づかないうちにジッと見入ってしまう。
「薫子。なに、キスして欲しいの? なら『キスして』って言えばいいのに」
すっと腕が伸びてくると、私の顎を捉えた大きな手のひらはクイッと顔を上に向ける。突然のことに動けなくなった私を見て、大登さんはニヤリと口角を上げた。
「キ、キスして欲しい……と思ってたわけじゃ、ないです」
「そう? じゃあなんで、俺の唇を物欲しげに見てたの?」
「物欲しげって……」
私、そんな顔してたんだ。恥ずかしい……。
両手で顔を隠そうとして、その手を大登さんの左手に阻止される。