これが私の王子様
「ゆ、結城君」
「何?」
「あの……これを……」
「ああ、有難う」
ゆかが差し出したのは、一冊の小説。
そう、これは約束のファンタジー小説で、和人は快く受け取る。
事情を知らない薫と直樹は、小説を指で指し示すと「何、これ」と、尋ねていた。
「小説。水沢さんのオススメ」
「なるほど、そういう関係か」
「お前等……」
「怒るな怒るな」
「こういう関係も、いいんじゃないか。和人の場合、こういう経験ないだろう? 皆、似たような人達だっただろうし」
「個人的には、上手くいってほしいね」
「な、直樹」
滅多に人の色恋沙汰に口を挟むことのない直樹が、今日に限って口を挟んでくる。
間近で和人を見ているからこそ、このように言えるのだろう。
現に学校の女子生徒は、曲者ぞろいだ。