これが私の王子様

「ゆかも、お願いしたら」

 詩織の言葉に、物陰からゆかが姿を現す。

 まさかゆかが近くにいたとは思わなかったらしく、薫と直樹、そして和人は気まずい表情を浮かべながら「御免」と、ゆかに謝るのだった。

「謝らなくても。私こそ、余計なことを――」

「ゆかは、余計なことはしていないわ。寧ろ、結城君を喜ばせたじゃないの。ねえ、結城君」

 詩織の詰め寄り攻撃に、和人はタジタジになってしまうが、ある意味詩織の言葉は正しい。

 和人は俯き照れを隠しながら、ポツリポツリとゆかに全く迷惑していないことを告げる。

「おっ! やっと素直になったな」

「素直って、何だよ」

「言葉のままだよ」

 薫からの言葉に、和人は何も言えなくなってしまう。

 意識していないといったら嘘になってしまい、ゆかと一緒にいると気が楽でいい。

 最初は「面白い人物」と認識していたが、今は違う。

 一緒にいたい。

 という想いが強い。
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