これが私の王子様
父親の言葉に真っ先に思い付いたのは、雅之の顔。
そして次に視線を向けたのは、和人の顔。
ゆかは頷きながら「知っている」と答えると、和人の名前を挙げ、同じ学校の生徒と話す。
『そ、そうか』
「お父さん、どうしたの? さっきから、声が震えているし。なんだか、様子がおかしいよ」
『会長が、息子の嫁にほしいと……』
「誰を?」
『ゆか、お前だ』
その言葉に、ゆかの身体が硬直してしまう。
硬直している間、耳元で父親が何か喋り続けているが、一切耳に入って来ない。
頭の中が真っ白になってしまい、半分意識が飛んでしまう。
『という訳だ、後は帰ってから話す』
そう言い、電話が切られてしまう。
耳元に響く通話が切れた音に、ゆかは意識を取り戻す。
だが、今の言葉が衝撃的だったのだろう、ゆかは呆然と立ち尽くす。
そんなゆかの肩に手を載せると、詩織は身体を左右に振った。