これが私の王子様
「……嬉しいよ」
「婚約?」
「それ以上、言わせるな!」
羞恥心が増している結果か、珍しく和人は大声を発する。
顔を微かに紅潮させ動揺している和人に、三人は拍手を送る。
特に薫がノリノリだったのだろう、指笛を吹いて祝福を送る。
「良かったじゃない、ゆか」
と声を掛けるが、反応はない。
「ゆか?」
やはり、反応がない。
それは、ある意味で仕方がない。
ゆかは初恋経験が無く、恋愛の知識は殆どない。
そのような状況で、いきなり「婚約」なのだから、いっぱいいっぱいになってしまう。
そして許容量オーバーの結果ゆかは、思考を停止されてしまう。
「あちゃ、これは……」
「水沢さん、大丈夫か?」
「多分、時間が経てば意識を取り戻すわ」
「曖昧な言い方だな」