これが私の王子様
誰かにゆかの身辺調査を頼んで、それにより彼女の父親の会社名が判明したのだろう。
それにより会社に電話をし、社長にこのことを伝えた――と、和人は考える。
和人からグループ傘下の会社と聞き、ゆかは両手で口許を隠す。
まさかこのようなかたちでも繋がっていたとは、人と人の縁はわからない。
こうなると、雅之の暴走が続くだろう。
「後で、父さんに聞こう」
「というより、婚約は?」
「そう、婚約」
「私は、結城君の意見を聞きたいわ」
詩織と薫と直樹にとって、この話はいいネタになってしまう。
それにこの場所にはいつも口煩い女子生徒達がいないので、話していても特に問題はないし、あれこれと騒がれる心配もない。
「さあ、本音を」
「本音は……」
「何?」
一斉に声を上げると、三人は和人に詰め寄る。
その表情は笑顔で、早く彼の気持ちを聞きたいのだろう「さあ、さあ」と、促す。
近くで聞いていたゆかは和人が何と言うのか、気になって仕方がない。