悲愛日記
「伊東ちゃん、八番テーブルお願い!」
「次はこれを二番テーブルに運んで!」
「莉子-----!レジまわれるーー!?」
「た、ただいまぁーーーーーーー!」
ガヤガヤとうるさい教室。
そんな教室は、文化祭仕様のカフェとなっております!
私はなぜか白のふわふわのワンピースを着させられて、背中にはクオリティーの高い天使の羽が縫い付けられている。
俗にいうコスプレカフェってやつです。
正直恥ずかしいけど、それを上回るほど忙しい。
ありがたいことに大繁盛で、廊下に行列が出来ているほどお客さんが来てくれてる。
嬉しいけど、休憩なしで接客をしているから足がいたい。
でも周りを見ればカラフルな服を着たクラスメイト達が一生懸命接客をしてるので、私も頑張ろうと再びヤル気を出す。
お盆の上に置かれたケーキと紅茶をこぼさないように注意しながら、指定されたテーブルへ運んだ。
「お待たせしましたぁー!」
運んだ先には他校の制服を着ている男の人3人。
なんとか笑顔を浮かべて、失礼のない態度で接する。
もう人見知りがどうとか言っている場合じゃないんです、はい。
「うわ、すげぇ!」
「かわいー」
「名前なんてゆーの?」
料理には一切視線を向けず、私をガン見してくる三人。
私じゃなくて料理を見ろよって思う。
そしてなぜかこの日までに杏奈に叩き込まれたマニュアルで、色々声をかけてくる男の人の対応が出来た。
ちなみに杏奈を相手役とした実演練習もさせられた。
その時の杏奈、絡むを超えてただのチンピラだったけれども。
「名前は秘密ですー!」
でも意外に、役に立っています。
マニュアルがなかったら、初対面の男の人に声なんて出せなくなっちゃう。
「えー」
「教えてよー」
「すみません、混んでいるので失礼しますっ!」
そして男の人達の声を振り切って、客席と区切られている厨房へと逃げた。