LB4
ヴヴ、とポケットの中でまた震えた。
黙るとか言ったくせに、スタンプへの返事がないからしびれを切らしたようだ。
だからって、もう見ないもん。
無視してスクリーンに集中しようとした、その時。
つんつん
右腕をつつかれた感覚がして反射的に右腕を見る。
あたしが座っている右端の席と壁の間の通路に、田中が携帯を持ってしゃがみ込んでいた。
「————……!」
驚いて、思わず悲鳴を上げそうになってしまった。
息を飲んだ音が目立ったのか、前の席の子があたしの方を向いたけど、小声でごめんと謝っておく。
何やってんのこんなところで。
今授業中だよ?
遺伝子のビデオ見てるんだよ?
何考えてんの。
田中があたしの右腕を掴み、クイクイ引っ張る。
来いということらしいが、どこへ行こうというのか。
助けを求めて隣の織恵に目配せをするが、田中の存在に気付いている織恵は、逆に行け行けとあたしの背中を押した。
腕を引かれるまま座席の後ろへ。
最後部の席から1メートルほどの幅があるこのスペースは、15センチほどの段があり、こっそり腰を掛けるのに適している。
田中がそこに座ったので、あたしもそれに倣った。
ポケットに入れていた携帯がスカート越しに段にぶつかってコトリと音を出したため、慌てて取り上げる。
誤ってホームボタンを押してしまい光った画面には、田中からの返信が表示されていた。
『気を引きたかっただけ。ごめん』