T&Y in神戸



「春休みにふたりで何処かへ出掛けようか?」


隠れるように付き合う事に由香利が疲れていることは誰だって気付いていた。


「…でもーーー…」

出来ない約束なんかする気はないが、由香利が遠慮する気持ちも分かる。

俺の立場を気遣うあまり、由香利が黙することが多くなった。

回りに気遣い、言ってもどうにもならないと、事有る毎に自我を押さえ、諦めてしまう。

自分の彼氏とか、許嫁という立場より、俺の社長という立場を尊重するようになった。


何の為にCOOを辞任してまで帰国し、何の為に巨大企業グループ・梁瀬の取締役社長に就任したのか。

ーーー本末転倒もいいところだ。




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